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千葉県北西部を震源とする10月7日夜の地震=マグニチュード(M)5・9=で、東京都足立区、埼玉県川口市、宮代町では震度5強が観測され、首都圏の広い範囲で震度4以上の揺れとなった。
列車の脱輪、水道管の破裂、鉄道の運行停止と高速道の通行止め、一部地域の停電など都市インフラに多様な被害が出た。重軽傷者やエレベーターに閉じ込められた人もいる。
前日の6日には未明に岩手県沖の地震(M6・0)、夕方に九州の大隅半島東方沖の地震(M5・5)が発生し、気象庁は緊急地震速報を発表している。
日本列島は地震活動が活発な時期にある。国民一人一人と自治体、国はそれぞれの地震防災対策を再検証し、命を守るための備えを徹底、強化したい。
気象庁によると、首都圏での最大震度5強は東日本大震災(平成23年3月)以来で、今回の震源の近くでは平成17年にもM6・0の地震が起きている。
首都圏の地下は陸のプレート(岩板)の下に東から太平洋プレート、南からフィリピン海プレートが沈み込んだ複雑な構造で、今回の地震は太平洋とフィリピン海のプレート境界付近で発生したと推定されるという。大きな被害が懸念される「首都直下地震」は、地震の規模がM7級で今回より大きく、浅い場所での発生が想定されている。
今回の地震の経験と教訓を、首都直下への備えに生かさなければならない。
たとえば震源から離れた足立区や川口市が強く揺れたのは、周囲よりも地盤が弱いことが原因と考えられる。首都直下地震は複数の震源が想定されているが、どの場合でも激しい揺れに襲われると考え、耐震化を徹底しなければならない。市区町村単位で発表される震度よりも「体感震度」が大きかった場合も、地盤や建物に揺れやすい原因がないか、検証すべきだろう。
けがは負わなかったが、危険を感じた人も多かったのではないか。危ないと感じた要因を確実に解消しておくことが大事だ。
首都圏に限らず、M7級地震ではインフラの機能停止は避けられない。被害の最小化と早期復旧への備えを絶えず更新することは、国、自治体とインフラを担う事業者の責務である。
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2021年10月9日付産経新聞【主張】を転載しています